今日はついにドイツで初めて動物病院に行って来ました。
今朝、2階の寝室の猫トイレでルイルイがおしっこをした後、すぐにトイレ掃除に向かったバカオが、「最近、ルイちゃん、おしっこの色がずいぶん黄色くない?前はほとんど色がなかったのに。」と言ったんです。
実は私も、ルイルイのおしっこ玉の色が濃くなったなーと11月中旬頃から思っていました。それでも、おしっこの回数や水を飲む量に大きな変化がないこと、本人至ってご機嫌で元気いっぱい食欲旺盛で、外見的には心配する材料がないので、「私の気のせいかなー」と思っていたところに、バカオの上記の発言です。
私たちバカ夫婦の心配しすぎ、あるいは気のせいかも知れませんが、なんせ、泌尿器系の病気は大きな症状が出たときには手遅れということが多いですし、今後在独中に1度も獣医に行かなくて済むわけがないので、病院の偵察も兼ねて、バカオがいて車の使える土曜日の今日、ルイルイを連れて動物病院に行くことにしました。
実は既に、この家を紹介してくれた不動産屋兼リロケーションエージェントのバプシーから、英語の通じる腕のよい動物病院を紹介してもらっていました。まずは、病院が開く10時少し前に電話をしました。電話口に出たアシスタントの女の子は、英語は少ししか話せないということだったので、「10時ちょっと過ぎに猫を連れて行きますから、よろしくお願いします」とドイツ語で予め連絡をしておきました。
動物病院は我家から車で12、3分くらいのところにあります。到着したのは10時5分でしたが、既に駐車場はいっぱい。待合室にも5組の先客がいました。ドイツ語の簡単な問診票に、電子辞書を引き引き「膀胱炎の疑い」と書きました。そして、30分ほど待ったところで、私たちの順番になりました。このときまでアシスタントの人はまったく英語を話さないので、獣医がどの程度英語を話せるのか、正直言ってちびにん、かなり不安を抱いていました。
いよいよ名前を呼ばれて診察室に入ると、獣医の先生(以下、ドクトルと呼びます)は、まだ若い男性でした。いかにも動物好きの人のよさそうなお兄ちゃんです。ちびにん、挨拶もそこそこに、拙いドイツ語で「私のドイツ語はまだまだ基礎レベルなので、英語で話していいですか?」と言ったところ、「どうぞどうぞ」と流暢な英語が返って来ました。さくさく英語が通じることに安心して、ちびにんのモーター回転数は一挙に上昇してしまいました。
ルイルイは、10月半ばにこちらに来たこと。表面上はまったく健康そのものであること。しかしながら、最近、おしっこ玉の色が以前より濃いと思うこと。これは、もしかしたら、私たち飼い主の取りこし苦労かもしれないし、勘違いかもしれない。でも、腎臓を含む泌尿器系の病気は症状が出る頃には取り返しがつかないことが多く、だからこそ早期発見が必要でそのためには尿の変化を見過ごすことができないと理解していること。私たちは他に2匹猫を飼っているが、そのうち1匹(ニチ)が下部尿路疾患(FLUTD)になったときも、おしっこ玉の色が濃くなったこと。だから今回も万一のことを考えて、今日ここに来たんです!
ドクトルは、私の話を聞きながら、てきぱきと、しかし、注意深く、ルイルイの全身(目・口を含む)を観察・触診していました。そして途中で、トイレに行く回数などについて質問をしたり、「尿の色は膀胱炎によって変わることもあるが、キャットフードが変わったことに影響されている可能性もありますよ、ただ、あなたの言うとおり、尿の変化は重大な疾患を示唆する場合が多いですし、膀胱炎以外の疾患が原因という可能性もありますね。」と言いました。
さらにドクトルは、診察の結果、少なくとも外見上心配する要素は見当たらないこと、しかし、内科的に本当に心配する必要がないかどうかは、まずは尿検査をしない限り判断できないこと、採尿の一番いい方法は膀胱に直接注射針を刺す膀胱穿刺という方法であること、ただし、触診の結果、今、ルイルイの膀胱にはほとんど尿が残っていないので、今日ここで採尿できるかどうかは、わからないこと、しかし、膀胱穿刺自体は大きな痛みを伴うものではないので、やってみようと思うこと。痛みを感じることはないはずだが、膀胱穿刺のために仰向けで保定される姿勢が猫にとってはかなり嫌かもしれない、という説明を続けてしてくれました。
ここまでのドクトルの説明、飼い主に対する態度とルイルイに対する扱いの手際のよさに、ちびにん・バカオ、すっかり、ドクトルを信頼する気持ちになっていました。それで、「膀胱穿刺に大きな痛みが伴わない」という点を再確認した上で、ドクトルにとりあえず採尿にトライしてもらうことにしました。
ドクトルはエコーと触診でさらに膀胱の位置を確認した上で、途中注射針を変えながら3回トライしましたが、残念ながら、今日、ルイルイの尿を採取することはできませんでした。結局今日のところは、「来院前の2、3時間、トイレを撤去して我慢させた状態で再度来て下さい。」ということになってしまいましたが、ちびにんが「他に家で出来ることがありませんか?」と聞いたところ、「家庭での採尿は難しいし、膀胱穿刺による直接採尿よりは、不純物の混じるリスクは高いけど、採取後2、3時間くらいの尿ならば、尿中の蛋白・血液・結晶の有無については検査できるので、自分で取って持ってきてもいいですよ。その際、病院が開いている時間でなくても、電話をして持ってきてくれればいいですから。」と言ってくれました。「採尿するためには、トイレの砂を止めて新聞紙などを少し敷いて(たくさん敷くとすべての尿が新聞紙に吸われてしまう)、このシリンジで吸い取ってください。」と採尿用のシリンジ3本をくれました。
合格です。この病院、この獣医に、在独中のちびにん家の猫たちの健康管理については任せて間違いなさそうです。
ちびにんの考えるよい動物病院、よい獣医とは、①まず何より動物が好きで、患畜及びその家族の気持ちがわかること、②相手は物言わぬ動物ですから、診断に必要な最大限の情報を得るためには、必ずくまなく丁寧に全身の触診を怠らないこと、③相手は物言わぬ動物ですから、その代弁者である飼い主の話をよく聞くこと、④専門家として責任を持って治療や検査の効果・リスクをきちんと説明した上で、飼い主の判断を仰ぐこと、⑥獣医がベストと思う方法以外でも飼い主が望む方法があるのなら、その方法について一緒に考える余裕があること、⑥最新の医療について常に勉強していること、⑦勘で診断するのではなく、きちんと科学的な方法で確定診断を出すこと、以上、7つの条件は最低満たしていなければなりません。
ドクトルは全部の条件をクリアしたと私たちは判断しました。彼を信頼し、うちの子たちの主治医になってもらおうと、バカオ・ちびにん、完全に意見が一致しました。そして、今日の診察代は請求されませんでした。確かに、検査ができなかったので、特に薬も出ず何も目に見える成果はありませんでしたが、時間を使ってもらったし、使い捨ての注射針やシリンジの費用は生じています。しかし、お会計は次回ということになり、今日は無料でした。ま、次回に目の玉の飛び出るような請求が来るのかもしれませんが、東京のうちのかかりつけの病院だったら、絶対きっちり診察料の請求はあったはずですから、ちょっとびっくりしました。
さて、これからしばらくルイルイのストーカーになって、頑張って採尿してみます。ビニール袋に手を入れて、排尿中に手(ビニール袋越し)でダイレクトキャッチする方法をためしてみようと思います。半分実験台にされた上にまだ診断のつかないルイルイは、気の毒でしたが、よい獣医が見つかったという点で、ちびにん・バカオにとっては実り多い動物病院行きでした。