我が家のニチオは、ドイツで1回、アメリカで1回、メタカムを当時のかかりつけの獣医に処方されました。
メタカム、ドイツの製薬会社ベーリンガー・インゲルハイムが開発した、非ステロイド系消炎鎮痛薬で、注射と経口(錠剤または液状の飲み薬)の2つのルートで投与できるものが市場に出ています。
日本でもかなり使用されているようで、経口投与型のメタカムはオンラインショップでも購入可能です。そのオンラインショップの説明書を読んでいて、ちょっと気になることがあったんですよ。
水薬のメタカム(0.5mg/mlの低濃度バージョン)は、欧州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは猫にも使用が許可されています。日本のオンラインショップで売られているメタカムは、どうやらオーストラリアあたりから輸入されたもののようです。
これらのオンラインショップは、メタカムの主成分のメロキシカムはアメリカ食品医薬局FDAが猫への使用を承認している、と水薬バージョンのメタカムの説明書で謳っているのですが、これは間違いじゃないけど100%正確でもないんですよね。
というのは、FDAはメタカムの注射バージョンについては猫への使用を承認しているので、メロキシカムという成分が猫に使えるとFDAが認めていることには間違いないんです。でも、経口投与する水薬のタイプのメタカムは未だにFDAは猫への使用を認めていません。
もともとアメリカでは1.5mg/mlの高濃度バージョンのメタカムが、FDAの承認を得て犬用に売られていました。アメリカでもその後0.5mg/mlの低濃度バージョンも小型犬用に売り出されているそうですが、こちらもFDAは犬への処方のみ承認しただけで猫への使用を認めていません。つまり、メタカムの主成分であるメロキシカムの猫への投与をFDAが許可しているのは、外科手術後の疼痛管理など一時的な使用に限られる注射型のメタカムだけなんですよ。
私は直接FDAに問い合わせたわけではないので本当のところはわからないのですが、欧州などで猫への使用実績がある低容量のものもFDAが認可していないのは、どの程度の量と期間、投与すれば重大なリスクにつながるのかの評価がまだ済んでいないから、なのかも知れません。
メタカムは消炎鎮痛効果の高い非ステロイド薬ですから、使用のメリットは高いと思います。我が家のニチオがアメリカ時代、パサデナの猫専門病院で効用外処方されたときも、リスクをコントロールしながら使用すれば大きなメリットがあると猫先生が判断されてのことでした。(猫先生は使用するメタカムの容量と期間について、カナダの獣医師と相談していました。)
しかし、猫についてはメタカムはその投与量を誤ると腎不全を引き起こすリスクがあり、死亡例も報告されているそうです。欧州やオーストラリアでは経口投与の水薬も許可され使用されていますけれど、それは獣医の処方の下に投与後の猫の全身状態をきちんとモニターしながら使用することが前提です。そして日本での使用もほとんどの場合は、獣医さんの指示の下に適切に行われているとは思います。
しかし、オンラインショップでは獣医さんで買うより何でも安く入手できることが多いのでとても便利ではあるのですが、重大な副作用の可能性がある薬を素人が獣医に相談せずに使うケースもないとはいえません。だからこそ、薬の説明書は正確な表示をして欲しいと思います。アメリカFDAがメタカムの猫への使用を無条件に承認しているかのような記載を読んだ人が、容量の大きい犬用ボトルのほうが経済的と思ってアメリカで一般に売られているメタカムを個人輸入して猫に使用したら大変なことになりかねません。
アメリカFDAはメタカムの液体飲み薬の猫への使用をまだ承認していません。
特にアメリカで流通しているメタカムは、欧州等メタカムの猫への使用を認めている国や地域で流通しているメタカムより高濃度のものが主流です。これを猫に使用することは大変危険ですからやめてくださいね。
シドニー大学獣医学部のメロキシカムに関する説明
製造元ベーリンガー・インゲルハイム社のHP
FAQs for cat owners
1. Is METACAM safe for cats?
Yes,
METACAM Solution for Injection is proven safe for use in cats when administered in the clinic prior to surgery when used at the labeled dose. In a 3-day safety study when METACAM was administered at up to 5 times the recommended dose, cats tolerated the medication well and no serious side effects were observed.
METACAM Oral Suspension is not approved for use in cats.
2. Is METACAM used the same way in cats as it is in dogs?
No. Although METACAM is designed to relieve pain and inflammation in cats as well as in dogs, the situations in which you use METACAM are different for both. In dogs, METACAM treats pain associated with osteoarthritis. In cats, METACAM is used as a single injection before certain surgeries (spay, neuter, orthopedic surgeries) to make cats more comfortable during recovery.
ベーリンガー・インゲルハイム・ジャパンの注射薬メタカムの説明書