日本だと慢性腎不全猫には、ACE阻害薬のフォルテコールとか、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)のセミントラが処方されるようですね。この2つの薬は人間用の高血圧の薬で、慢性腎不全の猫には腎臓にかかる血圧を下げることにより腎臓を保護する効果を期待して処方されているようです。フォルテコールはたぶんブラジルでも流通しているようですが、セミントラは日本でも比較的新しいようなのでそもそもブラジルでは入手不可能なんじゃないかと思います。
いずれにしても、ブラジル獣医からはまだ投薬の指示が出ないので、ルイルイさまはもちろんニチオも薬は飲んでいません。フォルテコールは日本から調達して飲ませようかとも思いましたが、今のところニチオは血圧は正常なんですよ。何より、飲み始めにクレアチニン値が急上昇する恐れがあるという噂を聞いたので、尿検査や血液検査、心臓の状態とか、獣医が注意深くモニターして的確なアドバイスをくれるかどうか、心もとないこの国で使うのはリスクが高そうで断念しました。
薬は飲んでいませんが、ニチオとルイルイさまにはカリナール2を飲んでいただいております。カリナール2は、いわゆるシンバイオティクス、すなわちプロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含んでいるサプリメントで、日本ではバイエル薬品が製造元のイタリアから輸入販売しています。
プロバイオティクスとは、腸内フローラ(腸内菌叢)のバランスを改善することにより有益な作用をもたらす生きた微生物のことです。つまり、お腹の腸内細菌のバランスを整え、腸内の異常状態を改善し健康に良い影響を与えてくれる生きた微生物、代表的なのはヨーグルトに入っているビフィズス菌でしょうか。プレバイオティクスとは、プロバイオティクスの働きを助ける物質のことで、消化管上部で分解・吸収されず腸内まで届いて、そこでプロバイオティクスのエサになる物質です。善玉菌だけを増やす(悪玉菌は増やさない)作用のあるもので、オリゴ糖類や食物繊維などがその代表的なものです。
腎臓は血液をろ過して尿を作り、体内に毒素を排出する役割を果たしています。本来クレアチニンや尿素窒素は腎臓で血液から尿に取り込まれなければいけないのですが、腎不全になるとそれがうまくいかなくなって、これらの毒素の血中濃度が上昇するわけです。ところで動物の体内には、腎臓以外にも毒素や老廃物を体外に排出するために働く場所があります。それが大腸です。腎臓が十分機能しないために取り出せないクレアチニンや尿素窒素を、大腸の働きを活発にすることで便の中にうまく取り込んでもらえないか、というわけです。プロバイオティクスやシンバイオティクスのサプリメントを積極的に取り入れて腸内環境をベストな状態に持っていけば、体に害のあるものがいつまでも血液の中に残らないんじゃないかと期待されているのです。
ちなみに、カリナール2の成分は、マルトデキストリン、フルクトオリゴ糖、オレンジバイオフラボノイド、ビタミンC、エンテロコッカス・フェシウム、ビタミンB6、ラクトバチルス・アシドフィルス、葉酸、ビタミンB12とパッケージに書いてあります。確か、動物用のシンバイオティクスを謳っているのはカリナール2がはじめての製品らしく、獣医の注目度も高く動物病院で処方されるケースも増えているようですね。アメリカでもEntirely PetのようなOnline Shopで売られていますが、そこでもReviewの評価が高いです。それに加えて我が家がカリナール2を選んだ大きな理由は、その飲ませやすさです。カリナール2は人間の鼻や舌では味も匂いも感じません。湿気を吸うとベタベタとダマになるので、たぶん独特の舌触りがあると思います。逆に湿気を吸ってダマになる性質は、直接口腔内に投与するときに役立ちます。水分を加えて丸薬にして、直接猫の口内の上顎部分になすりつける方法でも投与が可能だからです。
ちなみに、プロバイオティクスとしては、MitoMaxマイトマックスとか、FortiFloraフォルチフローラ、もあります。前者の高位バージョン?MitoMaxSuperマイトマックススーパーが日本では共立製薬から発売されています。共立製薬のHP等によると、「従来の乳酸菌とはまったく異なる、生きたまま腸まで届くペディオコッカス菌を配合した腸管内サプリメントで、生菌が胃酸などに負けず大腸・小腸まで直接届いて増殖・定着し、ほんのり甘い味で食べやすく動物の体にやさしい天然成分なので安心できる」とのこと。原材料は、ペディオコッカス・アシディラクティシ、サッカロミセス・ボウラディ、マンナンオリゴ糖、ラクトース、酵母抽出物、アルミノケイ酸ナトリウム、ゼラチンです。オリゴ糖やラクトースが入っているところを見ると、シンバイオティクスとうたってもいいような気がしますが、どうなんでしょ?なお、”ペディオコッカス菌”は従来の乳酸菌よりも温度・酸素・酸に強いことが特徴で、室温で保存可能であり胃酸や胆汁などの強い酸性環境でも生きたまま腸まで届く点で画期的なようです。実はブログのコメント欄で教えていただいてMitoMax時代にも使ったことがあるんですが、MitoMaxは結構匂いが強くて飲ませにくかったです。MitoMaxSuperはそれに比べると相当匂いが軽くなりましたが、まだ若干匂いますね。人間の鼻でもわかるので猫ならもっとわかるでしょう。実際、ニチオはカリナール2が混ざっていても気にしませんが、MitoMaxSuperが混ざっているウエットフードは食べないです。カリナール2よりサラサラしているので、水分を加えて丸薬状にするのも難しいです。
FortiFloraはアメリカ・パサデナ時代にボランティアをしていたアニマルシェルターで使っていました。アメリカではピュリナが販売しているプロバイオティクスです。下痢気味の猫に与えると目覚しい効果があったことを覚えています。成分は、エンテロコッカス・ファエシウム、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、タウリン、その他ミネラル(zinc proteinate, salt, manganese proteinate, ferrous sulfate, copper proteinate, calcium iodate, sodium selenite)です。1グラム当たり、少なくとも1 X 108 CFU/g の生きたプロバイオティクス菌を含むとされています。メインの微生物がエンテロコッカスなので、カリナール2と同じですね。ただ、微量だろうけれどミネラル成分に塩が含まれるのが気になるのと、FortiFloraは匂いがかなり強いのが難点なんです。ニチオもルイルイさまもミスティですら「くっさー」と言って断固拒否。ジュニ男は鰹節やフリーズドライササミをふりかければ、なんとか騙せます。ただ、イーストっぽい匂いなので好きな猫は逆に喜んで食べるかも。ハルは結構好きみたいです。
シンバイオティクス、プロバイオティクス、いずれも所詮サプリメントですから、どの程度、効果があるかはよくわかりません。ただ、ルイルイさまは便秘気味だったのが、カリナール2を飲ませ始めてから、ずいぶん改善しました。特に飲ませ始めた頃は、劇的に排便がブリリアントになり、感動しました。ちなみに、ミスティもハルもジュニ男も、カリナール2がちょっとでも入ったご飯を食べると、翌朝はほれぼれするような、立派なブツをお出しになられます。残念ながら、他猫と比べるとニチオにはそれほど顕著な効果は見られません。もともと便通がいいので目に見える効果が上がりにくいんですが、腸内細菌の種類やバランスに個体差があるので、その猫にとって効果的な菌とそうでもない菌があることが関係しているのかも知れません。だから、ニチオだけはしばらくMitoMaxSuperに切り替えてみようと思ってます。
私はもともと自分自身がサプリメントの摂取には消極的です。でも、副作用がないこと、安全性が確認されていて、無理なく飲ませられるのなら、科学的に効果が実証されていないとしても、サプリメントを利用すればいいと思います。仮に科学的に効果がないとしても、飼い主が効果を信じるポジティブな気持ち、安心感がペットに与える影響は大きいですもん。プラセボ効果万歳!ただ、個人的には、ちょっと変な電波を発していそうなところが販売しているものにはあまり手を出す気がしません。だから、大手の製薬会社が販売しているもの、獣医も勧めているものという点で、カリナール2を飲ませています。