発端は去年の暮れの健康診断でした。その日は猫先生が休暇中で、代診のR先生がジュニ男を診てくれたのです。とにかく大声で鳴き通しのジュニ男に先生もあきれた様子で、「面白い子ね」と。そう言ってくださるのはありがたいことですが、世の中の人が皆同じように感じてくれる保証はありません。我が家はいずれまた飛行機にジュニ男を乗せて移動しなければなりませんが、こんなに大鳴きされちゃー、機内で他の乗客の方々にご迷惑になるし、そもそも機内持込自体をチェックインカウンターで拒否られちゃうかもしれません。
ホメオパシーとかレスキューレメディとかフェリウェイとか、いろいろ試してみたんですが、はかばかしい効果が見られなかったこと。あまり気は進みませんが鎮静剤を使うしかないか、と思っているんです、とアタクシ。ちょうどいい機会だと思って、獣医さんに相談してみたんです。R先生は2種類のお薬を処方してくれました。ひとつはAlprazolamという抗不安薬。人間用にはXanaxという名前で出回っていて鬱病の患者さんなどに処方されているそう。なんというか、ちょっと感情・感覚を鈍くするような感じで気持ちを落ち着ける効果が期待できるもの。服用すると眠気が出てボーっとするそうです。もうひとつは、いわゆる本当の鎮静剤。手術の際の麻酔導入前に使われているAcepromazineという薬。こちらは抗不安薬のAlprazolamに比較して、ダイレクトな鎮静効果があって筋肉を弛緩させ呼吸も少し遅くなってドローンとした反応が出るそう。このどちらを使うのがいいのか、時間のあるときに試してみたら?ということになったわけです。
いずれの薬も肝機能障害を起こす可能性があり、肝臓の悪い子には与えられません。心疾患・てんかんなどの既往症のある子、ペルシャやパグなど短鼻・短頭種にも禁忌です。投薬可能かどうかの判断のために、必ず獣医の診断を受けて下さい。また、貨物預けで移動する場合は、鎮静をかけることはほとんどのエアラインで禁止されています。これらの薬を使うと、心拍数が下がったり、筋肉が弛緩して、呼吸が遅くなり低体温になることがあるので、機内持ち込みで移動する場合より大きな温度変化や、不完全なベンチレーションの可能性のある貨物輸送にはリスクが大きいです。
あれからもう2ヶ月以上が経って、今日、やっと片方試してみました。薬を使うには万一のときに駆け込めるよう、かかりつけ獣医がやっている日であること、そして丸一日アタクシが在宅してジュニ男の様子を観察できること、の2つの条件が揃っていなければならないのですが、暇なはずの専業主婦のアタクシでもそういう日が実はなかなかなかったものですから。
今日使った薬は抗不安薬。昨日の夜から置き餌のカリカリを少なめにして、朝までにほとんど食べ終わるようにしておきました。朝起きたときにはカリカリは完食されており、お猫さま皆々、飢え死にするーと大騒ぎ(死にゃしませんがな)。で、ジュニ男にはツユだく缶詰の汁だけにピルクラッシャーで粉砕したAlprazolamを混ぜて与えました。運動機能が後退する効果のあるお薬なので、高いところに上らないよう予め危ない場所はすべて封鎖しておきました。
投薬後2時間、ソファの下に隠れているジュニ男を確保。キャリーに入れてみました。R先生はドライブに行くように勧めていましたが、ジュニ男はキャリーに入れられただけで大鳴きする男なので、ドライブまで連れ出さなくても薬の効果が出ているかどうかはわかります。逆にキャリーに入れないと、薬の効果を評価できません。というのは、ジュニ男は昼間は基本的に寝ている男なので。ぼけーっと寝ているのが薬のせいなのか、日ごろの習慣どおりなのか、わかんないんです。そのためにかわいそうだけど、キャリーに入ってもらいました。
捕獲の際、普通だったらもっと抵抗すると思うのですが、ぼよよーんとなっていたジュニ男はさしたる抵抗もなくすぐに捕まりました。キャリーの中に入れるのも普段よりずっと簡単。どうやら薬は順調に効いている模様。しかし、キャリーに入れられると鳴き始めました。とはいえ、普通の鳴き方を100とすれば、音量は30から40くらい?それから、ずっと鳴き続けているというよりは、アタクシの声が聞こえたり、他の猫がキャリーの様子を見に来たりしたときをきっかけに鳴き始め、断続的に鳴いていました。6時間くらいはそんな感じだったかな。
6、7時間後になると、ちょっと声が大きくなってきて、また、鳴いている時間も長くなってきました。ただ、キャリーの中をのぞいてみると、まだジュニ男の瞳孔は散大したままだったので、まだ薬の影響下にあったと思います。それが8時間後になった頃には、更に大声で鳴くようになり、キャリーから出せ出せとキャリーの内側を爪でガリガリするようになりました。下手に怪我でもされると困るので、この時点で実験は終了。ジュニ男をキャリーから解放し、8時間飲まず食わずだった彼にご飯を食べさせました。いやー、がっつくがっつく。おなかすいたよね、ごめんね、ジュニ男。キャリーから出したときは、ちょっとした足元のふらつきが見られました。
そして10時間後。すっかり薬の影響下から抜けた模様。おばさん、おばさん、なでてください、とまつわりつかれるようになりました。どうやらジュニ男は、今日、アタクシに薬を盛られてキャリーに監禁されたことを覚えていないらしい。薬が抜けた瞬間、長い睡眠から覚めたような感じだったのでしょうか。薬の副反応も特に認められませんでした。
完全にあさっての方向に行ってしまう薬よりも、本猫の意識があることが確実に見て取れるため、この薬の安心度はかなり高いと思います。しかし、鳴き猫ジュニ男を完全に黙らせることはできないみたい。ただ、あの程度のボリュームの鳴き方ならば、飛行中の機内では雑音にまぎれてしまうはず。うーん、どうなんだろ、ま、70点から80点くらいの出来かな。悪くはないけどこれで満足していいのかどうかは正直自信がないです。空港地上職員の人たちは厳しいし、旅客だってそんなに我慢強くはないでしょうから。ただ、薬が切れたとき、ジュニ男はまるでよく寝た後のような清清しい気分を味わっている様子だったことが幸いでした。
もうひとつの鎮静剤Acepromazineについては、しばらく間を置いてから、使ってみようと思います。こちらのほうが鎮静効果は高いものの、量をコントロールするのが難しく、逆にハイテンション、ハイパーアクティブになってしまう可能性が結構高いことが、心配の種です。ま、両方使った結果を見て、どっちがいいかを決められればいいかな。
アネモネさん推奨のサプリ、マイトマックスが届きました。早速使ってみましたよ。いやー大人気。但し、ハル限定。ハルは、なになにーおかーさん、これ、チョーいい匂い。おいしー。と、大騒ぎ。一人でカプセル3個分、ペロリと舐めてしまいました。ハルは、長生きするつもり、満々です。
しかーし、ハル以外は全然ダメ。食べてくれません。ううーむ。どうしたもんか。大体、身体にいいもの、アタクシが食べて欲しいものに限って、絶対食べないんですよね。猫ってまったく人間の思うようにはならないんです。とほほ。