ドイツからアメリカに引っ越してきて、10ヶ月が経ちました。いやーTime flies so fastっす。
趣味の乗馬やシェルター(動物愛護施設)でのお手伝いを通じて、やっとボチボチ、地元に知り合いができつつあるという程度で、まだまだわからないことの方が多いのですが、私が見聞したアメリカのペット事情、ここらで一度まとめておこうと思います。
1. ペットショップ
PetsmartやPETCOというような、フランチャイズの大きなお店のほかに、規模は小さいけど商品のセレクションにこだわっている、まぁちょっとお高めのショップがあります。いずれのお店でも犬猫の生体販売は行われていません。(ハムスターやチンチラ、モルモットなどのげっ歯類や熱帯魚は売られております。)大きなショップには、トリミング・グルーミングショップが併設され、わんこ向けにはトレーニング教室やディキャンプ(わんこの保育園?)なども開かれております。パサデナのPetsmartには、動物病院も併設されてます。
ドイツ時代に我が家が利用していたペットショップでは、お店の出入り口に大きなボックスが置かれていて、そこにお店で買った(あるいは自宅から持ってきた)ペットフードやグッズを、地域の動物愛護施設Tierheim向けに寄付することができるようになっていました。
ここアメリカでは、もうちょっとやり方がダイレクトでして、レジでお会計のときに、寄付するかしないか、聞かれます。お店によっては、レジ係の人が「端数をラウンドアップ=切り上げて、シェルターに寄付しますか?」と聞いてくることもありますが、レジの機械自体にドネーションがプログラムされている店もあります。
たとえばPetsmartでは、カードで決済するときには最終金額到達前に、寄付するかしないか、YES・NOで選ばなければなりません。ここでYESを選ぶと、いくら寄付するか、金額を聞いてきます。金額自体は少額で、確か、$1、$2、$5、$10とかだったかな?詳しく思い出せませんが、選択肢を示されます。私は毎週1度のショッピングのたびに、2ドルか5ドル、寄付しています。1回、数百円の小さな金額なので大して懐も痛みませんから。結構いいアイデアだなーと思います。去年の末にはお店からメールで、「今年1年間、寄付をありがとうございました。あなたの寄付は、いろんな活動をサポートするのに役立ちました。」云々というお礼と報告が届きました。
この報告の中に書いてあった活動として、シェルター間の移送サービスへの支援というものがありました。アメリカには、たくさんのシェルターがありますが、シェルターの中には、一定期間に里子に出せない動物はやむなく安楽死という方針のところもかなりある模様。そうでもしないと、保護しなければならない犬猫の数が多すぎて、シェルターのキャパシティを越えてしまうという、日本の保健所とそう変わらない、お寒い事情があるようです。しかし、一方でノーキルNO KILLを方針とするシェルターもありますので、安楽死させられそうな犬猫を、ノーキルシェルターに移送する活動をしている人たちがいるんだそう。そういうボランティア活動をする人たちのガソリン代なんぞにも、Petsmartで寄付した小銭が回っているということでした。
これはあくまで私見ですけど、ペットショップとシェルターとのつながりは非常に深い、というのが日本やドイツとの差だな、と思います。まぁ、日本のペットショップは生体販売をしていますから、里親探しをする団体や個人とは言わばライバル関係。お互い協力するような間柄になり難いのは当然でしょうけど、ドイツも愛護施設TierheimとペットショップZooの間には直接協力関係はなかったように思います。
ドイツは、犬猫を小さなケージに入れて展示するのは、法律違反なので。里親募集のためであっても、長時間、ケージに閉じ込めて展示するという考えはたぶんドイツ人にはないんです。しかし、アメリカのシェルターは、ペットショップの一角にスペースを借りて、ケージを設置して里親募集中の猫たちをほぼ常時展示しています。うちのミスティは、こうして展示されていた猫でした。
もちろん、シェルターの人たちも狭いケージにずっと閉じ込めておくこと、決していいと思ってはいません。が、Exposure露出を増やさないことには、里子に出すチャンスはありませんから、やむをえないということらしいです。ちなみに、私の関与しているシェルターでは、同じ猫をずっとケージに入れているのではなく、シェルターやフォスターホーム(一時預かり家庭)とペットショップのケージの間を各猫がローテーションで回っています。なお、成長期の子猫は運動や社会化が必要なので、ショップのケージに入れて展示はしません。勢い、ペットショップに出ているシェルターの猫たちは、割と動きの少ない高齢の成猫ばかり、ということになります。
このほかに、毎週土日、Adoption Event里親里子お見合い会が各ショップで開かれています。こういうイベントのときは、猫だけでなく犬もたくさんショップにやってきます。あ、そうそう、うさぎ専門の保護団体もあって、うさぎもやってきます!ペットショップでのアダプションイベントは、シェルターの保護動物と里親さんとの大きな出会いの場です。ここで気になる子がいれば、里親候補者はシェルターに書類を提出します。書類審査に通れば、シェルターからペットが自宅に届けられ、通常は2週間のトライアル期間を経て、問題がなければ正式譲渡に至るというのが、アダプションの一般的な流れです。
ペットショップが地元のシェルターに貢献している度合いは非常に高いです。しかし、シェルターとショップの緊密な連携がよく知られているので、最近ではペットショップ前に遺棄される犬猫が後を絶ちません。また、アダプションイベントの会場で、シェルターに犬猫を引き取って欲しいという話もよく持ち込まれるそうです。
2. シェルター(動物愛護施設)
去年のクリスマス直前から、地元のノーキルシェルターのボランティアとしてお手伝いを始めました。最初は、上記のペットショップに展示されている猫たちのお世話から始まったのですが、試用期間?が過ぎたのか、シェルター本体の手伝いもそろそろ始めることになりそうです。私が関わっているシェルターは、仕切っているボランティアの性格にもよるのでしょうけど、新しい人間を関わらせること、かなり慎重です。大学生はいますけど、高校生の大学入学用クレジット稼ぎのボランティアなどは端から相手にしていません。シェルターのある場所も非公開ですし、私自身、シェルターの合鍵を渡して大丈夫な人間なのかどうか、ペットショップでの見習い期間に審査されていたんだろうと思います。
今、シェルター内に暮らしている子は30匹くらい?そのうち今後なんとか里子に出せそうな子は、私が見る限り、せいぜい10匹いるかな、という感じです。ノーキルなので高齢猫が多いこと、そして、やっぱり残っている子は常に治療が必要な疾患を抱えていたり、バカ尿癖があったり、人なれしていない子であったり、難しい子ばかりなんです。
なお、子猫はシェルターにはおらず、一時預かりさんの家庭で面倒を見てもらっています。社会化させ人なれさせ、十分に運動して体も心も発達させるためには、シェルターは理想的な場所とはいえないので。子猫は里子に出る確率が高いので、割と回転が速いんです。で、結局シェルターが半分老人(猫)ホーム化する循環になるわけです。
こうしたシェルターの運営には政府・自治体からのサポートは一切なく、完全に民間のボランティアによって財政的にもマンパワー的にも支えられています。お金はすごくかかるけど、まぁ、寄付もなんとか15年間続けてこられるくらいには集まるらしいです。寄付だけでなく、いろいろなイベントを通じてのFund Raising資金集めも盛んだそうです。こういうチャリティが盛んなのもアメリカっぽいなーと思います。
3. 家庭での飼い方
我が家周辺は、犬を飼っている人が圧倒的に多いです。一戸建てで犬を飼っていないお宅というのは、ほとんどないんじゃないかなぁ。で、犬が好きで飼っているというより、防犯用に飼われているという雰囲気。なぜなら、皆さん、全然、わんこを散歩に連れて行かないから。犬はバックヤードあるいはフロントヤードに放し飼い。番犬ですから、当然、よくほえるほえる。ドイツだったら、すぐに苦情が来て、Ordnungsamtに通報されそう。しかも、散歩もろくに連れて行かないとなったら、虐待として飼い主は罰せられるかも。
いえ、もちろん、ちゃんとお散歩に連れて行ってもらっている子もいるんでしょうけどね。ただ、この近辺では人間が散歩する場所もあんまりないので、ドイツ・ミュンヘン近郊とはそもそも環境が違いすぎるんです。
猫も外出自由の子が圧倒的に多いです。そして、この近辺では数少ないドッグレスな我が家の庭は、格好の猫の集会所になってしまいました。野良猫もいるけど、首輪をつけた飼い猫も集まってきて、芝生の上にうんこしまくってます。しかも、今はちょうどサカリのシーズンで、我が家の壁は外に集まる猫のマーキング尿を浴びまくっておりますよ。家の中では、ニチオがこれに反応してマーキングするし。もう、大変っす。
こういう状況から見ると、一般の飼い主の意識はあんまり高くないですねぇ。避妊去勢手術をしないまま、外出自由にさせている猫が多いのは、望まれない子猫がたくさんシェルターに持ち込まれているという事実からも明らかです。
そして、犬は庭に放し飼い、猫も外出自由がデフォなもんで、コヨーテのエサになるペットが非常に多いそうなんです。コヨーテ、私はまだ2回しか見たことありませんが、我が家周辺の住宅街にも出没しているらしいです。もうちょっと山の方に住んでいると思ったのですが、ロス近郊は山火事が多く、山火事があるたびに焼け出されたコヨーテが町に向かって下りてきているそうなんです。
先日、猫病院の待合室で会ったオバサマが、隣家のプードルがコヨーテに襲われたときの話の一部始終を聞かせてくれましたが(プードルは一命を取り留めました)、そんなことがすぐ近くで起きているなんて、ちょっと愕然。しかし、コヨーテには罪はないんです。自分ちのペットがコヨーテのエサになったら絶対嫌ですが、コヨーテが山に住めずに里に下りて来ざるを得ないのは、コヨーテのせいではなく、やっぱり人間が悪いんです。
そのくらいはアメリカ人もわかっていて、住民の大半はコヨーテはトラップかけて捕まえて山に戻して欲しいと望んでいますが、行政は安楽死させているようです。残念ながら、山に戻してもきっとまた戻ってきてしまうということなんでしょう。
以上、あくまで私の周囲で起きていること、私の見聞したことにしか過ぎませんが、アメリカペット事情の一端でした。