ジュニ男、膀胱炎、再発してしまいました。火曜日の午前中くらいから、ちょっと「ん?」と思う兆候(トイレ砂の散っている範囲が広くなった)があったのですが、さほど頻繁にトイレには行ってない様子なので、気のせいかと思っていたんですが・・・。
残念ながら気のせいではなかったようで、その夜から頻繁にトイレに行くジュニ男。トイレに入るものの、少しずつしか排尿していません。膀胱に実際に溜まっている尿は少ないのに、常に残尿感・尿意があるようです。
うああああああああー。
膀胱炎再発で、再び病院へGOです。でも、ちょうどよかった、水曜日の午前中はトナカイ先生の担当の日だ^^。
今度こそ尿検査をしてもらいたいので、可哀想ですが病院に行くまで排尿しないように、ジュニ男をケージに入れて診療時間まで待機することにしました。(ケージの中には、砂なしの簡易トイレを入れ、ケージ内には防水シートをしいてあります)
既にちびちび排尿を繰り返しているので、ケージに入れるために捕まえたときのジュニ男の膀胱は空っぽ。獣医に行くまでの4時間ほどで、検査に必要な十分な尿が溜まるかどうかわかりませんでしたが、さらにちびちび排尿を繰り返されるよりはマシなはず。
画像は、ケージの前でジュニ男を心配しているうちに、寝ちゃったニチオ。
ところで、この折りたたみ式のソフトケージ、便利です。前扉のジッパーを開ければ普段はキャットハウスとしても使えるし、いざというときはジッパーを閉めてケージとして利用できます。折りたためばぺったんこになります(高さはこのままです)。アメリカのSturdi社製。ドッペルハウス型だけでなく、一戸建て&テントもあります。我が家は、この商品を東京で買ってドイツまで持って来ました。引越の際、家具の出し入れやハウスクリーニングなどで、大勢の人が出入りして作業することが何度もありましたが、そういうときにどさくさに紛れて猫たちが脱走しないよう、このケージとテントが大活躍でした。
しかし、病院についたとき、診察室にいたのは、男性のドクトル(院長)ですた。つい最近、狂犬病のワクチン接種に行ったとき、ちょっと、まぁ、いろいろあったので、おそらく私の顔は、全力で「あちゃー」な表情だったと思います。
その上、診察してもらったジュニ男の膀胱は、ほぼ空の状態。何故だ、何故なんだー?せっかくケージで待機させたのに、意味なしじゃんか。前回の予防接種時のキャリー内での勢いある排尿はどうした?今回はキャリーの中で排尿した場合に備えて、キャリーにも防水シートを敷いて、その上に簡易トイレを仕込んで、ジュニ男はそのトイレの中に入ってくるという体制で、準備は完璧だったのに・・・。
結局、この日も尿検査はできず。「診療時間終了後も預かってもらって、尿が溜まったら検査してもらえませんか?」とお願いしたのですが、「病院に人がいる時間内に検査ができるほどは溜まらないと思う。」と、ドクトル。他の可能性として、全身麻酔下でカテーテルを入れて尿を搾り出すという方法がある、と説明を受けましたが、ドクトルは「これは緊急の場合だけ。猫への負担を考えると、お勧めできない。とにかく、症状が出てからだと採尿できないから、今度は調子のいいときに、尿を溜めてきてください。」
うーん、しかし、それは実際、非常に難しいミッションですよ。私が家にいるときで、ジュニ男の膀胱が満タンで、しかも獣医の開いている時間。そのスリーカードが揃う確率は、かなーり低いです・・・。
ドクトル曰く、「前回の処置で症状が消えたなら、まぁ、今回も消炎剤と抗生物質で対処しましょう。」結局、他になすすべもなく、その日は注射2本、家で飲ませる用に抗生物質5日分と消炎剤を出してもらいました。
koruさんも言ってらしたけど、アメリカ同様ドイツも対症療法がメインですねぇ。まぁ、獣医療の場合、原因究明が難しいということもあるでしょうし、原因がわかったところで、病気によっては治療の選択肢がそんなにないかも知れない。、さらに、原因究明のための検査が、動物にとっては非常にストレスフルである、ということもあるので、対症療法中心になるのも致し方ないと、ある程度は納得できるのですが・・・。どうも根本的な病気に対する考え方が、東洋医学の伝統のある日本とは違っているようで、深いところで話が通じないというか、なんかザラザラした気持ちが残るんですよねぇ。
しかし、このドクトルは、手技はすばらしいし勉強熱心だし、優秀な獣医なんだと思います。実は、先日の狂犬病のワクチン接種の後、アメリカで流通している遺伝子組み換えワクチンPurevax(不活化ワクチンが法律で定められているドイツでは認可・流通してないらしく、ドクトルは知らなかったっぽい)についての情報をメールで送ったんですが、「素人が口を出すな」と気を悪くしているかと思ったら、わざわざ「この間はメールをありがとう。とても興味深い情報でした。」とお礼を言われました
(大人の対応だ)。まぁ、ここの患畜で日本の検疫に関係するのは、我が家がおそらく最初で最後だろうから、実際、役には立たない情報だろうけど・・・。
さて、病院から帰ってきたジュニ男。すっかり元気です。その夜、バカオが会社から帰ってきたら、いつも以上にダッシュで出迎えて、いかにも「今日、おばさんに痛い目に遭わされた!」とばかりに、とうちゃんに向かって鳴きまくり。チクリやがって。むかつく。ジュニ男、お前には今日からチク男というあだ名を加えてやろう。
ということで、現在も投薬中。ちゃんと薬飲ませている間は症状は治まっていて、ジュニ男は現在絶好調です。しかし、前回と同じように短いインターバルで繰り返すことになったらと思うと心配です・・・。
ジュニ男の膀胱炎再発をきっかけに、久しぶりにドイツ語Wikiの、
FLUTDを見たら、気になる記述がありました。
”Unter diese Krankheitsbezeichnung wurde bis in die jüngere Zeit sämtliche Krankheitsbilder des unteren Harntrakts eingeordnet, heute wird der Begriff vorwiegend nur noch für gutartige Entzündungen ohne erkennbare Ursache (idiopathisch) verwendet, die meist spontan binnen einer Woche ausheilen.”
FLUTDという用語(概念)は、以前は下部尿路の全ての疾患に使われていたが、今日では主として、1週間以内に自然治癒する原因不明の良性の炎症のみに使われている。
早速、Feline Idiopatische Cystitis(FIC)をキーワードに検索したところ、
ドイツの獣医さんのサイトがヒットしました。
また、英語のIdiopathic FLUTDをキーワードに検索したところ、2003年の10月にタイのバンコクで行われた、
第28回世界小動物獣医団体会議でミネソタ大学の獣医学部の人たちによる学会発表のサイトがヒットしました。
アメリカでは、膀胱炎のうち「非閉塞性」で「原因不明」のものを特発性膀胱炎Idiopathic FLUTDと呼んでいるようです。つまり、尿道が閉塞していない状態で、血尿、排尿障害(困難)、頻尿という特徴的な臨床症状が見られ、その原因がわからないものがIdiopathic FLUTDと呼ばれているよう。
原因不明といわれている特発性膀胱炎ですがが、今日では、尿路上皮のGAG(グリコサミノグリカン)層(膜)が傷ついたりその細胞数が減ったりすることが、その原因と推定されているようです。なぜなら、このGAG層は、細菌や結晶の膀胱への進入を防ぎ、尿タンパクなどの物質の動きを制御する役割を果たすことで、膀胱や尿道を守っているからです。GAG層のダメージがどうやって起きるかについては、ドイツの獣医のサイトには、“結石や非常に濃度の高い尿、あるいはストレスによって、特定の神経または脳内の神経伝達機能が刺激され、膀胱内の痛みや炎症を引き起こし、この炎症がGAG層を傷つける”と書いてあります。そして、”傷ついた膀胱内壁からたんぱく質がはがれると尿中たんぱくが増え、それ自体が(結晶が存在しなくても)閉塞Obstructionを起こす可能性があるし、尿中に既に小さな結晶がある場合は、それと結びついてさらに閉塞がひどくなることがある。”とも書いてありました。
ミネソタ大学の報告は、従来行われてきた種々の治療法の評価(Therapeutic Rights & Wrongs)がメインです。報告はかなり長いので、私の気になった部分だけ抜粋して要約してみました。
① 抗生物質の使用について Antibacterial Agents
特発性膀胱炎の治療薬として、何十年も抗生物質が経験的に使用されてきたが、実際その処方の初期に、病原となっている細菌が特定されているケースは非常に少ない(1~3%)。また、抗生物質の効き目がないケースも報告されている。こういう抗生物質の無差別な使用は、耐性菌の発生の一因となっている可能性がある。
我々は細菌性の膀胱炎でない場合は、ルーティーンな抗生物質の使用を勧めない。
② 尿を酸性化する薬の使用について Urine Acidifiers
ストルバイト結晶を溶かしたりその生成を妨げるものとして、尿を酸化させることは役立つが、特発性膀胱炎の治療には価値がない。
市販のフードの大半は尿を酸性にするようデザインされている。薬によって尿を酸性にすると、既に腎機能に問題のある猫、尿を酸性にする治療食を食べている猫、成長期の猫には医原性の疾患が生じる可能性が高い。長期にわたって尿を極端な酸性に保つことは、血中カリウム不足、腎不全、骨中のミネラル分の減少、尿中のシュウ酸カルシウム結晶の生成などのリスクを高める。また、メチオニンの大量摂取は、ハインツ小体性貧血やメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性がある。
③ 非ステロイド系消炎剤(Piroxicam*)
Piroxicamは非ステロイド系の消炎剤である。経験的にPiroxicamの使用は、特発性膀胱炎の猫の排尿障害および頻尿に効果があるとされているが、この薬剤の安全性と効果について何らかの勧告をすることは、きちんとコントロールされたダブルブラインド(プラセボとPiroxicamの両方を使用)の臨床試験の結果待ちである。
*ちびにん注:Piroxicamは、我が家が処方されたMetacamと同じ成分を持つ薬です。
ミネソタ大の報告の基本的なスタンスは、急性の特発性膀胱炎は3~7日で症状が消えるので、どんな治療法も有害な副作用がない限りやってみる価値はある、ということですが、いくつかの治療法については副作用の懸念が指摘されていました。しかし、少なくとも私はあまり聞いたことのない治療法なので、ここでは取り上げていません。日本や今住んでいるドイツで一般的な治療法についてのみ、ミネソタ大学の報告からは抜粋しています。
結局、日ごろからなるべく水分を摂らせることが、一番副作用もなく効果的な治療法ということのようです。
なお、私は医療関係者ではないので、元サイトの情報の正しさについて専門家としての判断はできません。また、ミネソタ大の報告は2003年のものなので、必ずしも現時点での最新情報であるかどうかはわかりません(この後、特発性膀胱炎の研究で進展があったかもしれないので)。さらに、わかりやすいようにまとめるために、ドイツ語および英語の情報を要約してありますし、日本語訳についてはなるべく正確を期したつもりですが、間違いがあるかも知れません。このトピックに興味のある方は、できるだけ元サイトの情報をごらんになることをお勧めします。
それから、日本語で「特発性膀胱炎、猫」というキーワードでググルと、獣医さんのサイトを含む、いろんなサイトがヒットします。特発性膀胱炎(または間質性膀胱炎)は、日本で出版されている飼い主向けの猫の病気に関する本の中でも取り上げているものがあるように、既に知られている病気なので、さらに詳しい情報については、かかりつけの獣医さんから入手してください。
最後に、膀胱炎であるかどうか、また膀胱炎であった場合その原因が何かは、専門家である獣医の診察を経てのみ特定可能です。ネット上の情報は、あくまで獣医の説明を理解する補助としての機能しか持ちません。言うまでもないことですが、大事な愛猫の治療に素人判断は絶対禁物です。念のため。